「できない」事も、「できる」と信じて!

自閉症や発達障害、発達の気になるお子様は、強いこだわりや感覚過敏、いろんな特性からどうしても受け入れられない嫌な事や困り事があって、ひっくり返ったり、大泣きしたり、癇癪を起こして手が付けられない・・・

言い出したらきりがないぐらい、「どうしたらスムーズに過ごせるのか?」と日々悩んでいるかもしれません。

これは、私が保育園で一緒に過ごした自閉症のお子様の話です。

入園説明会でのYくん。知らない場所に来たことで抱っこされたままのけ反って落下・・・

「クルクル回すものが好きです」と何とか園の中へ・・・

「私(お母さん)以外からご飯は食べない」「椅子には座れません」「自分で食べません」

もうすぐ2歳になる身体も大きな男の子でした、抱っこも厳しい大きくて元気な・・・

①一番心配だった給食

しばらく慣れるまでは怒り逃げ回っていましたが、「園に来る」→「遊ぶ」→「給食」の流れを繰り返したことで、口から出すものも多かったですが、食べてくれるようになったのです。椅子も数分は座れました。

その後はまた違ったこだわりが出てきたのはさておき・・・

➡「できない」と思ってやらせないより、ちょっとずつ経験を!

こだわりの強さから、「母からしか食べない」「〇〇しか食べない」ご家庭ではそうしてきたのです。もちろん、嫌な思いをせず、心地よく過ごせる方がいいのでそうすると思います。嫌がる事を無理にする必要はないと思います。しかし、Yくんは毎日繰り返していく中で、少しずつ受け入れられるようになり、できることが増えたのです。

いつまでも「こだわり」でできないと思っていたYくんは、少しずつ成長していたんですね!

まだできない、受け入れられない時期なのかなと思うことは無理にはさせる必要はありませんが、いつまでもできないわけではなく、少しずつ経験や体験を増やしてあげることは必要だと思います。

②「ピンポーン」はお迎え!

インターホンが鳴ってお迎えが来るということを、園に毎日通う中で習得したYくん。「賢い子だ!」と感心していましたが・・・「ピンポーン」と別のお子様のお迎えのたびに玄関に猛ダッシュ!そして母でなければ号泣を1日に何回も繰り返すのでした。

「ピンポーン」がダメならと音楽に変えてみたら、ぴたっとそれが無くなりました!!しかし賢いお子様だったので、それがお迎えの合図に変わったことを覚えてまた号泣の日々が始まりました・・・

小さい園だった為、しばらくの間ノック式での対応しましたが、ふとした時にインターホンが!焦った私たちをよそに、知らん顔で遊ぶYくん。

知らぬ間に、インターホンルーティンはなくなっていました・・・

➡手立てよりも根気強い見守りと関わり

自閉症の特性で、同じことを繰り返すのは得意です。毎日繰り返し行うことで、習得できることも多いのです。なので、お迎えに来てくれるのが嬉しいYくんは、この「ピンポーン」→「お迎え」になっていたのです。ただ、思い通りにならないことを受け入れるのは難しいので、そのたびに号泣でしたが、「思い通りにならないこともある」が少しずつ少しずつ受け入れられる日も増えて、気が付けばなくなったのです。他にも理由はいろいろあると思いますが、「集中して遊べるものがある」「自由に動き回れて楽しい場所」とその場所で過ごすことがYくんにとって心地の良い場所になってきたからということもあると思います。

こうした「悲しい」の経験を繰り返し、そこにしっかりと関わってもらうことで、さらに成長したのですね!

音を変えたり、ノックにしてもらった事、今となってはしなくてもよかったのかもと思いますが、そうやって心地よく過ごせる方法を探していくことも、もちろん大切だと思います。

③お昼寝の時間が苦痛!

食後のお昼寝の時間。家では「お昼寝しません」いつもお外や建物内を走り続けていたそうで・・・

園で出来ることをやってみました。

寝ないという選択、狭く囲った場所で過ごしてみる、指先を使った活動をやってみる、お家のようなところに入って保育者と一緒に寝てみる・・・

どれも上手く行かなくて、延長戦となりましたが、運動量活動量の増加により、眠れる日が週に数日、習慣化でお布団でゴロゴロが出来るまでになりました。(1年以上はかかりました)

➡睡眠障害は改善は難しい。でも、習慣化することや周りの環境からの刺激が大事。

自閉症や発達障害で、睡眠障害を持つお子様は多いと思います。関りや援助で改善は難しい事だと思います。ですが、他のお子様と同じようにしっかり手指や身体を動かして遊ぶ活動を行う、食事をしっかり取る事、お昼寝の時間、その子に合った過ごし方を提供しながらも、他のお子様と同じように過ごす時間(お布団に入る等)も作るようにする事を繰り返す中で、活動量だけでなく、お友だちへの関心や興味なども広がっていったと思います。

園での成長を例にあげてきましたが、「じゃあ、園に入れたら成長する!」「なんでもできるようになる」というわけではありません。

私が伝えたいことは「できない」とやらせないのではなく、「できる」とお子様の力を信じ、成長できる環境や機会を作ってあげてほしいのです。

お子様の状況や成長によっては、保育園や幼稚園も受け入れが難しかったり、お子様に合わせた対応を取るのが環境的にも、人的にも難しい事も多いです。

それでも機会を増やしたり、経験させたいと保護者の方の頑張りで、お子様が成長できる事もたくさんあると思いますが、甘えてしまってなかなか上手く行かないこともあると思います。

そんなお子様と保護者の方に『療育』というものがあります。

お子様一人ひとりの困り事に沿って、活動や経験を重ねていきます。施設によって違ってきますので、お子様に合った場所で、たくさんの「できた」を味わっていけるといいなと思います。