やりすぎは逆効果!適切な言葉がけ

海外の方からある指導を受けていた時の事です。簡単な単語を並べてわかりやすく話してくれていたので相槌を打っていると、どんどん会話が弾むたくさんの言葉がすごいスピードで出てきた瞬間・・・私は何をわからな過ぎて簡単な言葉でさえ聞き取れなくなってしまいました。

なぜ、こんな話をするかというと、発達でこぼこに関わらず、認識、理解できる言葉の語彙数など明らかに大人よりは難しい事なのに、たくさんの言葉を一気に話されるとチンプンカンプンといった状態になってるのと同じではないのかと思ったのです!

発語がゆっくりで発達が気になるお子様には、『たくさん言葉がけしてあげてください』とか『絵本をたくさん読んであげてみてはどうですか?』とよく保育園なんかでも声をかけたりしています。

言葉の力を伸ばす為への働きかけで間違いではないのですが、耳から聞く力や言葉を受け止めて理解する力が十分に育っていないお子様にとっては逆に混乱させてしまったり、不快な気持ちにさせてしまっているのかもしれません。

2歳児からの持ち上がりの3歳児、Kくん。言葉だけでなく、運動面、認識面においてゆっくり発達遅滞でした。穏やかな性格でのんびりしていますが、お友だちの真似をしていたずらしたりするようなお子様でした。

長く担任をしていると、不明瞭な言葉で伝えてくる言葉も私は何となく理解でき、言いたい思いを言葉に置き換え繰り返すように確認したりしてコミュニケーションを取っていました。

Kくんとのやりとりに私はあまり困る事もなかったので、周りの先生たちはKくんの言葉の理解やどれぐらい発語できているかを知らなかったのだと思います。

夏の活動では、お休みする子も多く、合同保育といって別のクラスの別の先生と過ごす機会も多くなるのです。そんな時、K くんが別の先生から何かを言われていたのです。K くんは『うん、うん』と頷いていました。その話の内容量と言葉で私は理解できたのかな?とその後の行動を見守る事にしました。

案の定、指示された行動はKくんは理解できておらず、どこに何を持っていくのかさえ分かっていないと思いました。それでもやろうとするKくんは、お友だちがしている事をキョロキョロと見渡し「こうかな?あってるかな?」という顔をしながらやっていました。

私が高速スピードの英語で指導を受けた状況と全く同じ状況でした!!

Kくんはそれでも困ったような顔をしていたので、助け舟を出しました。言葉の理解だけではなく、要求の量が多すぎてKくんには何個も出来なかったのもありました。

Kくんは、二語文程度のやり取りしかできず、更に不明瞭で相手にはものすごく聞き取りにくく理解しにくいです。そして、一度に2つ以上の事は難しい発達段階です。しかし普段あまり関わりのない人からすると、周りの子と同じように伝わると思っていて、今回のような事が起きました。

ここから伝えたいのは、「たくさんの言葉がけ」も「絵本の読み聞かせ」もお子様に合わせて、正しく行ってほしいということです。

  • 必要な事だけを短く伝える。(「〇〇しようね」)
  • 場面に応じた丁寧な言葉がけをする。(「おいしいね」「きれいだね」「痛かったね」)
  • 具体的なものを目で見せてあげながら言葉がけする。

短い言葉なら聞き取ろうとする意欲も沸き、言葉の理解や発語も促しやすくなります。また、視覚からの刺激があるとさらに理解しやすいです。

言葉の発達が気になるお子様を持つ保護者の方は、とても不安で心配になり、早く少しでも話せるようになってほしいと焦ってしまい、いろいろと試されたり働きかけたりされていると思います。

ですが、一方的な言葉がけや働きかけにならない為にも、まずはお子様の目に何が映っているのか?どんなものに興味をしめしているのかをそばで一緒に見つめてあげてください。そしてその興味を持っている、目に映っているものを言葉にしたり感じた思いを言葉で伝えたりしてあげてください。

思った事、感じた事が言葉になると、思いが通じた嬉しさや、伝える手段を覚えていくのだと思います。

発達でこぼこのお子様によって、状態も度合いも違うので、一概にこれがいい!とは言い切れません。ですが、思いがまわりの大人や保護者の方に伝わったという嬉しさは、これから様々な人とのコミュニケーションを取り関わっていこうとする大事な意欲になると私は思います。

お子様一人ひとりの発達に合った、そして気持ちに寄り添った関わりをしてあげたいですね。