人と関わる中で、相手の気持ちを汲み取り、言葉や行動に移します。これって誰かに教えてもらって身に付けてきたものですか?人によって性格も考え方もあるので、対応には違いももちろんありますが、定型発達の方は、成長と共に自然と身に付けてきたのです。子どもたちもそうやって身に付け成長していくのです。
しかし、発達でこぼこお子様は、その『気持ち』というものを理解したり、感じ取ったりすることが苦手です。特性として苦手な事をなくすことはできないので、経験を重ね、感情として感じ取れるようになるわけではありません。
「どうしてやめないといけないの?」Tくんがこう返してきました。
本人はKくんと楽しく遊んでいるつもりなのですが、行き過ぎてKくんは今にも泣きだしそうです。でも上手に思いを言葉で発することが出来ないKくんは、「やめて」と言えず困っている状況でした。
「Kちゃんの顔見てみて!嫌な顔してるでしょ?楽しくない、困ってるからやめてあげて」
そう伝えたのですが、Tくんはキョトンとした顔でした。
Tくんにしてみれば、楽しいから遊んでいただけ。そしてKくんも何も言っていない・・・
相手の表情を読み取る、相手の気持ちを汲み取る・・・それが苦手なTくんには理解できる事ではありませんでした。しかし、その当時は、Tくんは手の付けられないぐらいやんちゃでしたが、言葉の遅れ等困り事も少なった為、「ただの乱暴者」として見られていました。
なので、「どうしてわからないの!悲しそうな顔してるでしょ!!」と怒られる事が多かったのです。
言葉、知能の遅れのあるKくんには、いろいろな手立てや支援をする中で、Tくんのこのような繰り返しの中にある苦手な事、困り事には気づいてあげられていませんでした。
プライベートで関りを持つ男性の、あまりにも人の気持ちへの理解がない所に引っ掛かりを感じ、「相手の気持ちが理解できない」という事を学んできた時にTくんのことを思い出しました。
Tくんも「自分は何も感じない」「わからない」という自分の気持ちもわかりにくいという思いの中、「なんでわからないの?」「お友だちの気持ちを考えて!」と怒られてモヤモヤとした気持ちでいたのでしょう。
知り合った男性もきっとTくんのように、「相手の気持ちが理解できない」ということに気が付かず、理解されないでいたのかもしれません。もう少し早くにその苦手な部分をサポートしていたら・・・と感じました。
人の気持ちを感じたりするのは、誰だって難しい事ですから、自分が感じた感情も理解が難しい発達でこぼこのお子様に理解させるというのは、とても困難な事です。
日ごろの言葉がけ、会話やお話の中での経験や、ストーリーを用いて「こういうときは〇〇なのよ」と起こった出来事と感情を結び付けていき、「相手の気持ち」を学んでいきます。
自分に置き換えて気持ちを考えたり、感情での理解を身に付けることはできません。
そういう繰り返しを経て、「きっとこういう時は嫌なんだろうな」「こういう時は〇〇した方がいいんだな」と経験として身に付けていくのです。
この経験から、少しでも早くにお子様の苦手や困り事に気づき、適切なサポートや支援をしてあげる事が大切だと思います。
人との関わりは、これから成長するつれて大きく広がっていきます。関わりが苦手なお子様も、経験や学びが多ければ、人と関わる中でも上手く活かすことが出来るかもしれません。
人と関わる事で、傷つくこともありますが、楽しめる事、学ぶ事もたくさんあります。
苦手なことである「人との関わり」の中に楽しさを感じ、幸福な気持ちを持てる・・・お子様にそんな未来を作ってあげたいですね!