お子様の成長に少しでも気になる事があると「あれ?」っと不安に思うことがあると思います。
特に『言葉の遅れ』は、周りのお子様を見ていたり、これぐらいになったらそろそろ喋ってもいいのにと気が付きやすいと思います。
言葉だけではなく、ちょっとした事が気になる事があれば、私たちとしては早い目に相談をしてほしいと思いますが、「もう少し様子をみましょう」「まだ大丈夫よ」と言われてしまう事もよくあります。
お子様の事で、気になり相談に行ったものの経過観察のままで、保育園に入園してきたお子様と保護者の方のお話をしたいと思います。
2歳児クラスの5月。転園を希望というRくんのお母さん。近くの園には同世代のお友だちがいなくて、一緒に遊べる子もいないので、Rくんの為に一緒に遊べる子がいる所がいいと見学に来られました。
私の園も小規模で2歳児クラスは4名と少ないスタートだったが、それでもと転園を希望してくれていました。園へはすんなりと入れたものの逆に帰らないと癇癪を起こしました。
その時点でも言葉がゆっくりなのは、感じていましたので「Rくんの為に」というお母さんの気持ちも察していました。
入園後、衝動的に走り回り、言葉の理解はしているものの、思いを止められない為お友だちとも上手く関われなかったり、無理やり奪い取ってしまったり。
そして何より、言葉が殆ど出ていなかった為、自分の思いの表現方法は、泣き叫び大暴れをすることしかRくんはできなかったのです。
お母さん自身、コミュニケーションを取るのを拒んでしまう方だった為、困っているのか家ではどうなのかがわかりませんでした。ただ、関わりとしては乱暴な言葉であってもお子様と向き合いはしているのを感じられました。
シングルマザーだった為、お母さんは就活をしていたのですが、なかなか見つからず、退園を余儀なくされる状況になりました。何とか役所と次月からも園に居られるように対策をお願いし、対策方法を伝えるととても感謝してくれました。この時初めて、Rくんへの思いを打ち明けてくれました。
私も「よかった」と嬉しかったのを覚えています。
実は1歳半検診でも、Rくんの育てにくさを伝えたり、その後もずっと、言葉の遅れなどいろんなことを相談に行っていたのだそうです。しかし、「男の子だし」「様子見てもいいと思うよ」と言われ、Rくんの衝動的な行動や乱暴な姿に対しては、「お母さんが乱暴にしてるからじゃないの」と言われる始末。
ショックでした。お母さんはしっかりとRくんに向き合い、困りごとに気が付いていたにも関わらず、手立てが遅れた事で、今Rくん自身も困っている・・・
私たちは、園で出来る限りの関わりや手立てを行い、お母さんとも密に話し合いながら園で約1年過ごしました。
お昼寝になると顔に唾を吐く、叩く蹴る、本当にパワフルで手が付けられない日もあるぐらい情緒も不安定なRくんでしたが、たくさんの保育士にたくさん関わってもらい、いっぱいほめてもらい、いっぱい叱ってもらい、泣いて笑って人との関わり方や表現の仕方、片言だけと言葉も出るようになりました。発表会では、一人だけ私と狼の役をすると一緒にお家を壊して大活躍を修め、後半に入園してきた言葉のわからない外国籍に子に「NO~」と片づけの時間を伝える姿まで見られました。
卒園後3歳児になり、大きな保育園ではしっかりと加配をつけてもらい、園連携しながらサポートをし、その後の保育をお願いしました。もちろんお母さん自身も次の園にきちんとお話をしてくれていました。
夏になり、卒園した子も夏祭りに招待していたのですが、Rくんも遊びに来てくれました。
好き勝手に走り回る事もなく、落ち着いていろんな催し物を楽しんで帰りには
「ありがとう。また来るね」とニコッと笑って保育士たちに声をかけて回っていたのです。
そして、「先生、Rがここに来れて本当に感謝しています」と頭を下げていかれました。
もっと早くにRくんとRくんのお母さんの困りごとに耳を傾け、関わってあげられていたらもっと違ったのかもしれません。ただ、そこに手を差し伸べてあげられた事は、今も私の喜びです。
お子様の一番近くでいる保護者の方の気づきは、本当に大切な事です。その後、成長していくこともあるでしょう。逆にその困り事で手立てが必要な事もあるかもしれません。
どんな小さなことでも、その「気づき」を大切にしてください。そして、いろんな人に話を聞いてみてください。それともっと大事なのは、保護者の方の思いや辛さ、悩みもしっかり出してください。
発達の気になるお子様、発達でこぼこのあるお子様、その保護者様の力になれるよう私たちはいます。
いつでも気軽にご相談くださいね。