自分の行動、態度に気が付けない発達でこぼこのお子様の友だちとの付き合い

発達でこぼこのあるお子様は特性として、お友だちの顔色を窺ったり、空気を読んだりする事がとても苦手です。また、距離感もわかりにくく、言葉でのコミュニケーション力も高くありません。

お友だちを怒らせてしまうような事を言ってしまったり、嫌な事をしてしまったりとお友だちとの付き合いの中で自分では気が付けなかったりわからなかったりする事があり、お友だちとの関係を上手く作れない発達でこぼこのお子様は、きっと多いと思います。

保育園や幼稚園での生活の中で、乳児期のお友だちとのおもちゃの取り合いなどのトラブルには、言葉での伝え方や、お友だちにしてはいけない事を伝える等繰り返し伝えていく等の対応や手立てを行っていくのですが、幼児のクラスになり、言葉でのやり取りを通した遊びや、身だしなみ等興味や関心の幅が広がる事により問題になる事も変化してきます。

今回は、発達でこぼこの女の子の3歳児~5歳児の間のお友だちとの関わりでのお話をします。

当時3歳児の女の子Hちゃん。担任を持った時は、少し言葉が乱暴で不器用なことからかなんでも時間をかけず雑に終わらせてしまう、そんな印象でした。

生活の中で特に気になったのが、「口のゆるみ」でした。いつも口が半開きでよだれが出ている事にも気が付いていないのです。ご飯の食べ方もこぼしがちで口を開けて食べている姿も見られました。その頃は、私もご両親も発達を気にするようなことは特になかったので、あごをしっかり使う食べ物を食べるようにとか、こちらから伝えるようにしようだとかその程度でした。

4歳児では、私は担任から外れていたものの、見かけるたびに「Hちゃん鏡みてごらん!」と言われているのを何度も目にしました。まだその状況は変わっていないのか!?と少し心配になりました。そのころから園でも発達を気にするようになり始めていました。

5歳児の年長になり、再度私が担任を持つことになりました。Hちゃんは、変わらず口元が緩く、よだれが出ていても自分では気が付いていませんでした。

また、よだれの事だけでなく、語彙の獲得も少ないためか、少しでも気に入らないと暴言を吐くといったお友だちとの関わりが目立ちました。仲良くしたいけど、上手く伝えられない事。そして一番の原因は「よだれが汚い」という理由でした。

小学校への就学前の1年でしたので、対処の方法を知らせていかなければと思いました。

クラスでのお友だちとの様子は、よだれが出ても気が付けず、そのままで、更に服装などの身だしなみが整えられないHちゃんは、お友だちからもそのイメージが付き、嫌がられているのを見ていても感じるぐらいでした。このままでは、「いじめ」に繋がるような人間関係をこんな時期から経験させてしまうと不安な気持ちになりました。

年長クラスは行事も多く、友だちと協力して行う活動も多いため、関わる機会を利用して、気持ちの面や言葉でのやり取りをする経験ができたと思います。そのたび、苛立ちで言い合いになったりする事も何度もありました。せっかく手伝おうとしてくれた事も「自分でできるわっ!」と激怒したり・・・

よだれや身だしなみも、相手に「タオルで拭いた方がいいよ」と声をかけられるたび「わかってるわ!」と毎回怒っていました。

友だちがHちゃんの困りごとに理解を向けてくれても、Hちゃん自身がなかなか受け止められない状況にものすごく悩みました。

乱暴な言い方で、お友だちからの優しさもなかなか素直に受け止められないHちゃんでしたが、衝動的な態度や言動が出てしまい、後になってどうしようと本当は困っていたのです。

どうしようと考えこむ程の理解は難しいので、落ち込む様子はありませんが、『なんでこうなるのかわからない』と困っている事だけはわかりました。

よだれもそうです。自分ではわからないからどうしたらいいのかわからないのだそうです。

でも言われると嫌なんだとも話してくれました。

そこで、「汚れてないかな?」「かわいい顔かな?」ってトイレに行くたびに確認すると曖昧な方法ではなく、習慣としてすることを決めました。すぐに忘れてしまう特性もあったのですが、「お友だちに言われるのが嫌」を回避することでもあるので、気をつけてするようになりました。

それ以外はなかなかいい方法が見つからなかったのですが、発表会の劇の中に取り入れようと提案した『側転』がこんな展開にするとは思っていませんでした。

Hちゃんは「やる」とやったこともなかったのに、男の子に混ざって挑戦したのです。まさかのまさか。Hちゃん誰よりもきれいなフォームでそして背が高くて足が長い子だったので、とても美しい側転をみんなの前で披露したのです。どうやらお家でお父さんとよくやっていたのだそうです。

その瞬間、Hちゃんはクラスのアイドルとなりました。嫌がっていた男の子すら「教えて」と・・・。

これを機に、お友だちへ教えてあげられる事がある自信や友だちとの関わり、そのことで更に気をつけるようになった身だしなみとHちゃんの姿は大きく成長しました。

小学校にあがってからも頻繁にやってきていたHちゃん。理解してもらえる人が周りにいないので、少し苦労している様子でした。しかし、みるみる成長していく姿にこれからも、きっとHちゃんなりに成長できると私は信じています。

お子様にとっての困りごとに手立てやサポートをして改善していくことは何より大切な事ですし、今後の成長に必要な事です。しかし、周りの大人が出来る事もあれば、お子様本人が獲得していかなければ超えられない困り事も大きく成長するにつれ、増えていきます。

その時に、私たち周りの大人は、お子様本人が獲得していきやすいいろんな場面や経験、機会を作ってあげる事だと思います。どこにどんなきっかけになるスイッチがあるかわかりません。

それは、目に見えた出来事からかもしれません、味わった心地よさからかもしれませんが、お子様にとっては嬉しい楽しいと思える事であるのは間違いないと思います。

目の前の困り事への手立てを考えるのではなく、困り事が少しでもなくせるような手立てをサポートをする事も大切なのかもしれませんね!