人見知りにしては激しすぎ?『場面緘黙症』って何?

場面緘黙症という言葉を聞いたことはありますか?

「人見知り」「恥ずかしがりや」がちょっと激しすぎるかなと思うお子様は、もしかすると場面緘黙症で、密かに苦しんでいるかもしれません・・・。

「家庭環境のせい」や「親のせい」という事を耳にしますがそれは誤解です!

場面緘黙症とは、言語や知能の発達に問題はありませんが、特定の状況(場所・相手・活動内容など)においては話せない、という症状があります。

原因ははっきりしていません。生物学的な要因として、不安になりやすい気質があり、心理的・社会的な要因などが重なって症状が出ると言われています。

背景の発達障害が原因の場合があります。感覚過敏(光や音に敏感)、物事の考え方、受け取り方の偏り、言葉の意味の理解や、単語を思い浮かべるのに時間がかかる等の特性から、場面緘黙につながっていることがあります。

  • お家で家族となら問題なく話せるが、学校や幼稚園、保育園などある特定の状況では、無表情で全く話すことが出来ない。
  • 言葉を知らなかったり、話すのが下手だから話さないという理由ではない
  • 症状が一か月以上続く
  • 学校や幼稚園、保育園でご飯が食べられない・トイレにいけない(家庭では大丈夫)
  • 不安で、体がこわばってうまく動かすことが出来ない。

4歳児の時に保育園へ入園したRちゃん。恥ずかしがり屋さんでどんな活動のも控え目。周りのお友だちに誘われると一緒に遊ぶ姿も増えてきましたが、言葉を発する場面は見られません。また、大人の言葉がけには固まってしまう場面はなかなか改善していかず、1年過ごしてきました。園生活を送る中で、認識面も難しい場面もあり、更に話さなくなっていたのかもしれません。

5歳児に進級。私が担任をすることになったのですが、Rちゃんの様子は把握できていた為、関わりやすいお友だちに協力してもらいながら少しずつ関わっていくことにしました。(しかし、この時は『場面緘黙症』という名前を知りませんでした。)

無理に言葉で伝えることを要求はしませんでした。どちらかを選択する場面では指さして伝える、「うん」「ううん」の首を縦か横に振る等で知らせる方法で意思疎通ができるように簡単な事から始めていきました。

夏は、プール遊びがメインになってきます。普段はお昼寝のない5歳児も、水に入り疲れも出る為、1時間ぐらいのお昼寝も行っていました。

Rちゃんにとっては、急に生活の流れやリズムが変化。どうしたらいいのという不安も見られました。

お友だちの助けもあり、流れやリズムには慣れていきましたが、いままでと違う流れやリズムで、トイレに行くことが出来なくなったのです・・・

普段は、流れでお友だちと一緒に自然と言っていたトイレ。お昼寝の起きるタイミングも、トイレに行くタイミングもその時はみんなバラバラだったので、

  • いつ、行っていいのかわからない
  • 勝手に行って怒られたらどうしよう
  • 言いたいけど伝えられない

Rちゃんの中で困っていたのだと思います。その結果・・・部屋の隅や寝ころんだ場所で、漏らしてしまうようになってしまいました。

どうすれば、「トイレに行きたい」と伝えられるか、伝えなくても自分から行けるようになるか・・・

家庭では保護者の方には、ゆっくりながら話は出来るので、保護者の方に話をしてもらいお子様本人がどんな気持ちなのかを聞いてもらいました。

すると「トイレに行きたい」ということ自体を恥ずかしいと思っていると知りました。

5歳児の女の子。発達面でも気になる事が多かったので、羞恥心が芽生えてきている事には、嬉しく感じたのを覚えています。その芽生えた気持ちは大切にしながら、良い方法は何か考えてみました。

お友だちならどうだろう?大人の私だから恥ずかしいのか??

いろいろ考えましたが、まずは、お友だちが行くタイミングで誘ってもらい、行くという所から始めました。お友だちとなら行きたい思いを伝えられるかもと思ったからです。

そのうち、行きたくなると部屋の端でウロウロする姿が出てきました。そのタイミングを見て、お友だちにつれて行ってもらったり、そっと廊下まで連れ出し「行っていいよ」と声をかけると自分から行く等失敗してしまう機会を減っていきました。

Rちゃんの気持ちを大切にしながら行ってきた、伝える手段をこの後いろんな場面でも重ねてきました。

その結果、伝えたい事があるとお友だちをトントンとする、保育士の近くまで来る、遠くにいる時、困って動けない時は視線で伝えてくる等の変化が出てきました。卒園する頃には、「あのね〇〇した」片言ではありますが話をしてくれるようになりました。

卒園まで残り1ヵ月。当時まだ若かった私は、その時に『場面緘黙症』というものを専門の方から教えてもらい知る事となりました。知らないながらも結果としてよい対応を取る事が出来、更に『場面緘黙症』についてを学ぶ機会となりました。

そこで感じたこと、思ったことは、場面緘黙は話さない事にばかり注目してしまうのですが、大切なのは、お子様本人が、どんなことに不安を感じたり、できなくなってしまうのか、どんな事に困っているのか等、気持ちの面の理解することなのではないかと思います。

どんな手立ても、支援も、お子様に向き合う気持ちが何よりも大切なんだと改めて感じました。保護者の方だけでなく、お子様の通われる学校や幼稚園、保育園でも気持ちを大切に関わってあげてもらえるいいなと思います。気持ちを理解してもらえると感じるときっとお子様の姿も少しずつ変わると思います!