難しい気持ちの切り替え、成長に伴う気持ちの変化。

発達でこぼこのお子様の特徴として『気持ちの切り替え』が難しいというものがあります。好きな遊びをやめて次の活動に移せないや、思い通りにならず癇癪を起こしてしまう等がありますが、いろいろな経験を経て、少しずつ切り替えられる事も増えてきたり、周りからのサポートにより、先の見通しを持てる言葉がけをもらいながら切り替えたりできるようになっていきます。

しかし、お子様が成長にするに伴い、ぶつかっている気持ちの中身も変化している事に気が付き、ハッとしたことがありました。

3歳児の時には、「〇〇で遊びたかったのに!」とこだわりと思いが通らない事で毎日のように癇癪を起こしていたYちゃん。そのYちゃんも少しずつ気持ちを切り替えたり、活動できる事も増え、落ち着いてきたYちゃんも5歳児の年長クラスになりました。

Yちゃんは、新しい事には割とすぐにやりたがる子でした。5歳児になると運動会では「かけっこ」ではなく、チーム戦の「リレー」になるのです。いろんな遊びやルールのあるゲームや鬼ごっこ等で友だちと協力する機会はありましたが、友だちと協力して競争する「リレー」というのは初めての経験です。

1周走り、次の人にバトンを渡す。そして最後はどちらのチームが先にゴールするかで勝負が決まるというのがルールです。Yちゃんもうんうんとうなずいてはいたのですが、そのルールが理解できていなかったのです。

第一走者を走るYちゃん。走り出し半周したころ大きく差をつけられて先に友だちにバトンを渡されてしまいました。その瞬間に泣き崩れ、バトンを渡すまで走る事が出来なかったのです・・・。

仕切り直し、順番を変えたりしながら練習してみたのですが、やはり抜かれていくたびに、泣き崩れてしまうのです。ルールの理解が出来ない事ももちろんですが、自分が負けた事が納得できなかったのです。

運動会まではまだ先。早めに練習ていた事だったので、何回かリレーを遊びの中に取り入れて楽しんでいくことから始められたらと考え、戸外での遊びの時に入れるようにしました。

チームが一緒の友だちも、理解が深まり「Yちゃんをどうやって勝たせるか」と順番を考えてくれるようになりました。そして私からは、相手のチームにも同じぐらいの速さの友だちと一緒になるようにお願いして順番を決めてもらいました。『みんなで楽しみたい』その子どもたちの思いに救われました。

運動会当日。Yちゃんはバトンを渡すのが相手のチームよりも少しだけ遅れてしまいましたが、なんと泣くことなく渡し切れました。そしてYちゃんのチームが負けてしまいました。

その時です・・・Yちゃんはひっくり返って泣き始めてしまいました。そして「Yが負けたから・・・」と自分が勝てなかった事でチームが負けてしまったと責任を感じていたのです。

練習を繰り返し、友だちに励まされ協力してくれたという経験で、Yちゃんは「自分が負けた事」が納得できないという自分の思いで泣き崩れていたのが、チームに迷惑をかけたのではないかと変化していたのです。その後のYちゃんの変化は、相手に対して思い通りにならない、納得できない等で怒ったり泣いたりする事は減り、「だってYがしなかったから」と自分ができなかった事で思い通りにならなかった、納得できなかった事に泣いたり怒ったりが増えていきました。

気持ちの切り替えなYちゃんの癇癪は続きましたが、できなかった理由が自分にある事をわかっているけど切り替えられないと気持ちの中身はきちんと成長し変化していました。

気持ちの切り替えの難しさは、お子様本人にとって本当に苦しい事です。更に今回のように、気持ちの面での成長に伴い、「自分のせいで」と自己嫌悪になったりしてしまう事があります。

そんな風に気持ちが変化している事に気づき、自己肯定感を下げてしまわないような言葉がけや関わり、サポートが大切だと思います。

行動だけでなく、人間関係を築く上でも上手く行かない事が成長と共に増えていきます。上手く行かない経験をするたびに、「自分のせいで」と自己嫌悪になってしまう事も増えるかもしれません。

お子様がどんなふうに感じ、どんな気持ちどう困っているのか、たくさん話を聞いてあげましょう。