発達でこぼこのお子様で大変な事はと言えば「癇癪」や「こだわりが強い」「多動」等、対応や手立てが大変であることの方が多くあげられると思います。幼稚園や保育園、学校などでもこうした対応が大変なお子様への対応やサポート等に目が向けられますが、中には、おとなしくて目立ちにくい発達でこぼこのお子様もいます。しかし、手を取られるような事もない為、放置されてしまいがちになってしまい、困り事などに気が付きにくかったり、対応が出来ずにいたりする事があります。
おとなしくて目立ちにくい発達でこぼこのお子様は、困り事や自分の思いの発信や表現も少なくお子様本人が困っていてもそこに気づいてあげられなかったり、必要な手立てが出来ずに獲得できる力をつける機会を作ってあげられなかったりという事もあります。
私が、関わったAくんが『おとなしくて目立ちにくい発達でこぼこのお子様』でした。
3歳児クラスになったAくんは、発語がゆっくりな上にとても恥ずかしがりやで、話しかけられてもうつむいてしまったり、顔を隠してしまったりと新しい人と関わるのが難しいようでした。私自身も関係を気づくまで少し時間がかかりました。少しずつ環境や新しい先生、友だちにも慣れてき始めましたが、恥ずかしがる姿は相変わらずありました。
少し気にはなっていましたが、発達の心配というより、おとなしくて恥ずかしがりやな性格からの行動なのかなと思う場面も多かったので、見守りながら、自分の思いをしっかり出していけるような関わりをしていこうとAくんの事は考えていました。
そうです。『グレーゾーン』と呼ばれる、発達障害の症状がいくつか認められるものの、診断基準を全て満たすわけではないため、発達障害との確定診断をつけることができない軽度の症状だったのです。
しかし、私の解釈は性格からと思っていた部分もあった為、困っていても自分から発信できるように待つ姿勢で関わったり、自発的な行動ができるような関わりをする事の方が多かったように思います。
ですが、私が感じていたよりもAくんは、できない事も多く、行動や言葉で人に伝える助けを求めるといった行動は難しい困り事だったのだと思います。
Aくんのロッカーは部屋のちょうど角になる所でした。そこにボーっと立ったままいり事が多かったのですが、ある日からそこでグラグラと横に揺れるという行動が見られるようになりました。
それは、不安な気持ちを安定する為の発達でこぼこに見られる特性の行動であったのです。
何をしていいのかわからない、どうやって伝えていいのかわからないし、難しい・・・Aくんの中には不安や困り事でいっぱいになっていたのでしょう。また別の日には、横に揺れながらおもらしをしてしまい、それでも揺れていた・・・なんて事もありました。
Aくんの「ロッカーの前からのアピール」がなかったら私はAくんに必要な手立てやサポートがもっと遅れたりできなかったりしたかもしれません。
自分の思いをしっかり出すといった最初に掲げた目標設定は変えず、行動の指示や活動の内容、事前に細かく伝えたり、その都度伝えたりして自ら行動や言動、表現をしやすい関わりを増やしました。
そして、恥ずかしがりで自ら言葉でのコミュニケーションを取るのが苦手な事も考え、絵カードの行動指示を目に見えるように掲示することで、わからなくなってもそれを見て行動できるようにしました。
自分が今、何をすればいいのかがわかる事で、安心して過ごせるようになり、自ら行動できる事で、自信もついて笑顔も見られる事が増えました。また、自信が発語にもつながり、お友だちに声をかける姿も見られるようになりました。
私には相変わらず恥ずかしがっていましたが、それは「好きすぎて」だったようです(笑)
今回、、おとなしくて目立ちにくい発達でこぼこのお子様との関わりでの経験から、自分から発信できない困り事をどれだけ感じ取ってあげられるかが、大切なのだなと感じさせられました。
おとなしい子であると、幼稚園や保育園、学校などの集団の場所では更に発信することは難しいかもしれません。そして感じ取ってもらいにくいかもしれません。
一番近くでお子様の姿を見られている保護者の方、周りの大人が、しっかりと様子や姿をよく見てあげてほしいなと思います。困り事からの不安で身体を揺らしたり、行ったり来たりを繰り返したりといった行動を取るかもしれません。どうしていいのかわからず、同じ行動を長い時間繰り返しているのかもしれません。
わかりにくいかもしれないし、見つけにくいかもしれません。でも、「困っているんだよ」という何らかの『アピール』があるはずです。どうか見過ごさないであげてください。