『忘れっぽい』気に病む娘と気にならない母

発達でこぼこなお子様の中に『忘れっぽい』が気になるといったお子様もいるのではないでしょうか?この『忘れっぽい』が特性としてあげられるのがADHDと言われる障害です。

ADHDは、3つのタイプがあります。

一つは、多動性、衝動性が目立つタイプ(多動。衝動優勢型)。
一つは、不注意が目立つタイプ(不注意優勢型)。
一つは、両方が目立つタイプ(混合型)です。

ADHDの8割は、混合型です。

多動性、衝動性

多動性は、おとなしくじっと座っていることができないなど、とにかく、そわそわして、体が動いてしまいます。

静粛を保つべき公共の行事の場で、静かにできないということもあります。このほか、順番待ちが苦手だったり、他の人の会話にいきなり割り込んだりすることも多動性の中に含まれる症状です。衝動性は、計画性のなさであらわれますが、後先を考えられず、カッとなることも衝動性の一つに数えられています。

不注意

気が散って、物事に集中できない、好きなことには集中出来るが、切り替えが苦手することが苦手、忘れ物をなくすことが多い、ボーとしていて人の話をきいていない、仕事や懐疑に集中できない、などの特徴をもつのが不注意優勢型です。

不注意優勢型の場合、忘れ物が多くでてきます。約束を忘れたり、時間に遅れたり、締め切りに間に合わないということが出てきますから、支障をきたし、周りから顰蹙を買うことになります。

周りの人の迷惑もさることながら、一番つらいのは本人です。

そのつらい気持ちに悩んでいる姿にそばで見ている私もどのように対処してあげればよいか、悩んだ経験があります。

「だってYが忘れたからぁ~!!!」泣き叫んでいたのは、5歳児も後半になった時のYちゃん。

衝動的ですぐに廊下を走り回ったり、お友だちに攻撃したりの2歳児の頃に比べると、すっかりお姉さんに成長し、苦手だったりわからないながらもいろんな事を頑張れるようになっていました。

保育園の年長クラスになると、園を代表してお手伝い活動が盛んになります。そして就学前ともなる為、持ち物の準備等、身の回りの事も自分でできるよう伝えていきます。まだまだ難しい事ももちろんあるので、保護者の方にサポートしてもらえるようお願いした上で進めていきます。

責任をもってしてもらえるように、それぞれに約束事も設けていました。例えば給食の当番の日は「エプロン、三角巾を忘れずに持ってくる事」と。

Yちゃんは、とにかく自分のグループの日はとにかく張り切っていました。特に好きなお手伝いが朝の放送当番と給食の配膳当番でした。しかし、Yちゃんはとにかく忘れ物が多く、更にすぐに忘れてしまう事が多く後になって気づくというのが日常茶飯事でした。

ある日、給食の当番が当たっていたYちゃんグループですが、Yちゃん突然自分のロッカーの前でひっくり返って号泣し始めました。何となく察しはつきました・・・

「エプロンがない、Yのエプロンがぁ~」

収まりがつかないYちゃんに、「今日だけは保育園の貸してあげるから次からは忘れ物しないように気をつけて。」と園用のエプロンを差し出しましたが、首を横に振り、泣き続けるのです。

Yちゃんは、小さかった頃の『思いが通れば切り替えられる』ではありません。思いが通らない、叶わない事が悲しくて泣いているのではなく、自分が忘れ物をしたからお手伝いができない、それがつらくて悲しいのでした。

他にも、朝の放送当番が当たっている事を前日に何度も伝えていたのに、忘れてのんびり登園し終わっていて号泣、、、等たくさんありましたが、それは、Yちゃんだけの問題ではなかったのです。

Yちゃんのお母さんにもADHDの傾向があったのです。

「明日はエプロンがいります」「明日は朝放送当番です、遅れないように登園してください」Yちゃん自身だけでなく、お母さんにも念入りに伝えますが、2人とも忘れっぽいので、帰るとすっかり忘れてしまうのです・・・

そして、お母さんは「しかたない」と忘れたこと等が全く気にならないタイプ、それに対してYちゃんはものすごく落ち込むタイプ・・・なのでYちゃんの気持ちをお母さんに伝えても、難しい問題でした。

お母さんに協力を仰ぐのは難しい・・・考えた結果、Yちゃんが好きな事ならまだ忘れにくいだろうと思い、5歳児女子で流行っていた「お手紙交換作戦」をしました。当番前日、お手紙に「帰ったらエプロンをカバンに入れてね!」と書き渡しました。Yちゃんは「先生がお手紙くれた!」といつも大喜びで帰り、必ずお返事をもって次の日来るのです。エプロンも忘れず(笑)

もちろん、お母さんの方のサポートも行いました。持ち物が必要な時は、夕方お電話し、カバンに入れるように促します。登園時間に決まりがある時は、早めに家を出られる状態か確認の電話をしていました。

こうした親子へのサポートは、園にいる間しかできませんでしたが、卒園してから、Yちゃん自身も自分が気を付けられるよう自分で工夫できるようになったようです。お母さんの方も、園に姉弟がいたので関わりが続き、だんだんと自分から「先生、〇〇が△△にいるんやったかな?」と言ってくれるようになりました。

今回、ADHDの母と娘の親子との関わりを持った経験をした事で、こういったお子様の困り事だけでなく、保護者の方自身の困り事で悩んだり、苦しんでいる方もいるのかもしれないと感じました。

お子様だけでなく、保護者の方自身の困り事によってお子様へのサポートが難しい、お子様の困り事に築きにくい事もあると思います。上手く行かない等の相談をする事も大切だと思います。

「あれ?」とお子様や保護者様自身の事で困り事、育てにくさを感じたらまずはご相談くださいね。